都市の夏は暑い。けれども、田舎の夏に比べれば、どちらかというと人工的な、人為的な暑さ。
 高校の時の夏場の帰り道を思い出す。白いセーラー服にローファーを脱いで自転車に乗っていた、あの夏。暑さにかまけて、田舎の女子高生、みたいな格好で、タオルを首に巻いて。ペダルでなく規則的に足を揺らしながら自転車に乗って、足は素足、重い教科書を荷物に緩やかに熱風に押されていて。暑い暑いと文句を言いながら、田んぼの緑が目に冴えて。目の悪い虫たちを、ボクサーが攻撃をかわすように上半身を揺らしたりして避けてたり。汚い言葉だって吐きながら、二酸化炭素を自然が吸収してくれるように、あの場所が全部吸収してくれてて。木だとか虫だとか植物だとかの匂いが濃厚な帰り道が、今は。
 アスファルトやコンクリートの道に人工的な自然。ねっとりとした湿気を孕んだ熱風が纏わりついて。なんとなく、違和感。都会だ…今更自覚。無表情な人々に無表情なビル。
 こんなもの、かもしれないけれど。
 けれど、国道を下る途中、湾の横の歩道を軽快に潮の香りを含んだ風が吹いて、車の排気臭が思考から追いやられてた。
 暑い夏。