会いたかったのは違うひとだった。恋愛ではない、ただ顔を見て福岡に帰って来たのだと安心したかっただけ。難民のように朝大型バスに乗せられて、九州を西にくだり、バスの中の雰囲気は、隣の人と知り合わなければ勿体ないぞという脅迫観念でいっぱいで。下手くそな笑顔と称されたできあいの笑顔を貼り付けて、8時から19時までバスと工場行ったり来たり。気張らなくても良いひとと会いたいじゃない。利害だとかで繋ってないひとと会いたいじゃない。
×と大きく示された後に、着信。
『もしもし、私、○○の採用担当のものですが、ただいまお時間よろしいでしょうか…』