.北方謙三『破軍の星』集英社文庫
もともと北畠顕家の才たるや聞き及んでいたことだったので、北方謙三を知った時からこの著作については存じ上げて是非とも読んでみたいと思っていたのだが、今回にして漸く重い腰をあげた形となった。契機は『日本の歴史七 走る悪党、蜂起する土民』を読んだことだろうな。顕家の何に惹かれたかというと、その学問や武道、軍事の才はもとより、後醍醐天皇に苛烈なまでの諌奏をしたためた点だ。どうも諫めることができる人に対しては多大なる尊敬の念を抱くらしい。太宗に対する魏徴然りです。もちろん魏徴もすき………。
建武の新政直前後、顕家の活躍は凄まじいモノだったようで。もともと俊英の誉れ高い方であったんだけれど、それがどうしてどうして弱冠十六の少年に成せようかという布陣まで打つ。どちらかというと足利側からしか綴られない、若しくは足利が北朝を治めるようになるという筋書きをもった歴史しかみたことが無かったため、顕家なんてちゃんちゃらおかしいぜという気風しか抱いてなかったんだけれど。いやぁ彼の脅威を改めて『日本の歴史七』で思い知らされたっつーかさ。
それよりも、はぁ〜尊氏も新田義貞後醍醐天皇も、一癖がありすぎますな…という印象を受けたのでした。更に小説ではその色も濃い。まぁそれが小説だけど。
歴史小説です。+北方謙三タッチの捉え方。色々あるだろうけれど、いやはや面白い。とにかく北方謙三は読ませるから。五時間で読破。あーあ。